旋法(せんぽう)を知ろう!〜長調、短調、和音の話2〜

前回の記事は、長調の音階がどのようなものなのか、音と音との間隔に注目して紐解いてみました。

今回の内容は、もう少し突っ込んだ話です。しかし、今回も出来るだけ分かりやすく書いていきますのでへこたれずについてきてください。

音階よりも旋法(せんぽう)が大事

ここでまず整理しましょう。

旋法 = 隣の音とどのような間隔で並んでいるか

音階 = ドレミファソラシドのように音を高さの順に並べたもの


前回から何度も出てきている音と音の間隔とその並び方は、旋法と呼ばれていて、古く中世から受け継がれているものなのです。

長調の音階は
第1番目の音から全-全-半-全-全-全-半の間隔で並んでいる音のまとまり
で、これが数ある旋法の1つであるということまず理解してください。

ハ長調の起源は数ある旋法の1つ

旋法の歴史は、教会音楽の歴史

ハ長調の音階のもとは、数ある旋法の1つで、イオニア旋法という名前がつけられていました。

私たちが、日頃聞いている音楽の多く、特にクラシック音楽は、中世ヨーロッパの教会音楽をもとにしています。

グレゴリオ聖歌という名前を聞いたことがあるでしょうか?
中世ヨーロッパの教会で歌われていた、このグレゴリオ聖歌に使われていたのが、「教会旋法」です。

14の教会旋法と長調、短調

教会旋法は14あります。(一説には12とされている場合もあります。)
これらの旋法の中から、以後の作曲家らによって、好んで用いられていった旋法が、現在の長調、短調の原型として残っていったとされています。

長調の起源はイオニア旋法

イオニア旋法

イオニア旋法は、全-全-半-全-全-全-半の音の並びでできている旋法です。たまたま図のように第1音がド(C)なので、イオニア旋法 = ハ長調 と誤解されやすいのですが、あくまで全-全-半-全-全-全-半の間隔で音階ができているということを理解しておいてください。

短調の基はエオリア旋法

短調のことについて詳しく説明するのは次回として、ここでは、短調の基になったエオリア旋法について少しだけ触れておくことにします。

エオリア旋法

エオリア旋法はラ(A)からピアノの白鍵だけを弾いた時に現れる音の間隔です。
全-半-全-全-半-全-全 の間隔で並んでいます。

イオニア旋法と比べると半音となる位置が変わっているのがわかります。

その他の教会旋法

イオニア旋法やエオリア旋法と同様に、レ(D)からピアノの白鍵だけを弾いていくと、音の間隔は、全-半-全-全-全-半-全 となります。
これはドリア旋法といいます。

また、ミ(E)から始めると、音の間隔は、半-全-全-全-半-全-全 となって
フリギア旋法となります。

このように、隣の音との間隔が全音なのか、半音なのか、その並び方の違いによって長調、短調などの区別が作られてきました。

現在の定義からすると旋法の中には、長調、短調のどちらにも属さない音階もあり、それらは時代、地域によって特徴があります。

いろんな国のいろんな旋法

日本の呂旋法、律旋法

旋法のお話の最後に、教会旋法以外の旋法について少しお話します。
日本にも呂(りょ)旋法や律旋法といった旋法があります。

具体的な曲で言うと、山田耕作さん作曲の「赤とんぼ」は呂旋法で書かれた曲。また、坂本九さんが歌った「上を向いて歩こう」は律旋法で作られています。

呂旋法は、ドから始めた時に、ドレミソラドの音階になっています。
律旋法は、ドから始めた時に、ドレファラドの音階になっています。

どちらも全音、半音の表記をすると間隔が開きすぎている箇所があるので、あえてこのように書きました。

アラビックなマカーム旋法

他には中東の雰囲気が漂う旋法もあります。マカーム旋法と呼ばれるものです。

代表的なマカーム旋法は、ドから始めた時に、ドレミ♭ファ#ソラシ♭ドの並びです。
これもミの♭からファの#まで特徴的な間隔になっています。

ということで、音楽の雰囲気を形づくっているのはこうした音どうしの間隔によるもので、それは旋法という名前であるという内容でした。

次回は、この旋法を足がかりにして短調の音階についてみていきます。